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最もよく知られている予測の種類として、
平均値を利用するものがあります。これは、予測に対して、それ
以上と、それ
以下とのそれぞれの重みが厳密に均一な値です。翌日の予測気温などは、典型的な平均値予測となります。
クォンタイル予測はこれと異なります。予測に対して、それ以上とそれ以下との確率を変えるために
バイアスが意図的に導入されています。クォンタイル予測は、小売業、卸売業、製造業などの業界に従来の予測に対し、抜本的な改善を呈しています。2012年3月、Lokadは産業用グレードでのクォンタイル予測を提示する業界初のソフトウェアベンダーとなりました。ここでは、クォンタイル予測の特徴と、従来型予測との相違点について詳述します。
序文
クォンタイル予測という用語は一見複雑に思われるかもしれません。統計学に深く精通していない場合は、今まで耳にしたことがないこともあると思います。ただ、 However,
クォンタイル予測は、これまで、そういった名称で呼ばれていなかったにせよ、小売業や製造業では頻繁に使用されてきました。例えば、在庫の
再発注点を決めることは、需要に対してクォンタイル予測をすることと厳密に同じことを指します。
小売業および製造業にとりクォンタイル予測が非常に抜本的な意味合いを持つにも関わらず、これまで市場ではほぼ注意を払われずにきています。最も簡単な説明としては、
クォンタイル予測をサポートするソフトウェアがソフトウェア業界では皆無に等しい状況であったことが指摘できます。しかしながらLokadにより、最早、この様な重要なテクノロジーの一部を見落とすことはなくなりました。
需要予測が必要なわけ
クォンタイル予測が小売業や製造業にとり必要であるかを理解する上で、そもそも何故予測が必要であるのかを振り返る必要が出てきます。需要予測は在庫、従業員、現金といった資源が必要な時に十分な水準にあるかを確認する上で重要となります。
しかしながら、一般に資源の水準に需要を対応させることは、
非常に非対称な問題です。資源を過剰割り当て(別名過剰予測)する費用は、資源を過少割当(別名過少予測)する費用と比べ大幅に異なることがあります。
例えば、
- 食品小売業者は一般に95%以上の非常に高いサービスレベルを追求します(つまり、在庫切れは非常に稀)。そうした中では、在庫切れによる限界費用は、在庫に余分なユニットがある費用に比べ、大いに上回ると推測できます。
- 自動車メーカーは常に生産コストを低減すべく圧力がかけられています。結果として、在庫ゼロ戦略を選択するメーカーも出てきます。つまり、すぐの販売がゼロとなり、車が先ず購入されてから、その後生産するといった格好となります。この場合ですと、余剰在庫の限界費用は、即時販売の在庫がないことでの限界費用を上回ると推測できます。
従って、企業にとっては、資源を
生の需要平均値予測をベースに沿って配置することは一般的に利益にかなっていません。時間の50%は、資源の配置が不足しているとなれば、事業の現実を反映していない、不利なトレードオフとしか言いようがありません。よって、企業は意図的に
事業の特殊な非対称性を反映させて、資源を配置するバイアスを導入しているのです。この非対称性をうまく対応することこそが、正にクォンタイル予測そのものなのです。
定義: クォンタイル予測(τ, λ)は、 τ (tau)を目標確率とし、 λ (lambda)を日数で表された期間とした場合、今からλの期間の需要予測を示す。将来の需要よりも高くなる確率はτ(結果的に、将来の需要よりも低くなる確率は1-τ)。
外挿法により推定したクォンタイル予測、及び、うまくいかない場合
クォンタイル予測は何十年にも渡り知られていましたが、
本来のクォンタイル予測モデルを実装することは、頻繁に、そして、正当なことながら、平均値予測モデルを実装することよりも非常に複雑であると思われてきました。結果として、大半の予測ソフトウェアベンダー(*)は、平均値予測のみを出しています。
(*) 私どもが知る範囲においては、Lokadがベンダーとして2012年3月に初めて本来の産業グレードの汎用のクォンタイル予測テクノロジーを発表しております。ただ、学界においては、リサーチのプロトタイプ クォンタイル回帰は既に何十年も存在します。しかしながら、クォンタイル予測が必要な企業は、一般にクォンタイル予測を出すにあたり
外挿的回避策を利用しています。実質的に言えば、需要は
正規分布に従うと仮定し、是正した
安全なタームを付け加える手法を取っています。例えば、従来型の
安全在庫のアプローチはこのパターンをとっています。
外挿法によるクォンタイルとは、従来型(平均値)予測が外挿法によりクォンタイル予測に転換したものです。これは、統計的モデルが直接クォンタイルを生成する本来のクォンタイル予測とは対立したものです。外挿法は、インプットデータには依存しません。その代わり自明的なものとして定義される分布によっています。この分布は通常正規分布となりますが、現実から異なることからも、外挿法の過程の中でも最も弱いリンクとなりがちです。
残念なことに、外挿法は以下三つの頻繁にみられる状況において、重要な欠点があります。
- 高いクォンタイル(つまり、サービスレベルが高い時)
- 断続的な需要
- 変動激しい需要(一括発注)
こういった状況の場合、最高の外挿法によるクォンタイル予測に比べ、
本来のクォンタイル予測が20%上回り優れていることが分かっています。なお、この比較は、それぞれLokadのクォンタイル予測および従来型予測によるものです。この予測自体が競合他社による予測に対して優れていることは言うまでもありません。
高いクォンタイル(高いサービスレベル)
予測に纏わるエラーは正規分布しているとの推定は、クォンタイル目標が平均値またはメジアンに近い場合は、一般に正しいと言えましょう。しかしながら、
目標率が増加すると近似の質が低下します。高い目標率、90%以上の場合は、外挿それ自体が最も予測の弱いリンクとなることが分かっています。この場合、本来のクォンタイル予測が選ばれるべきとなります。
断続的な需要
外挿法では将来の需要に対する不透明感を反映すべく、
なだらかなカーブになるように努めます。しかし、需要が断続的あるいは、まばらな場合は、
需要はなだらかでは全くありません。期間(週、月)毎に、販売されたユニット数、つまり、観測できる需要は、例えば0と5の間で変化するとします。これまで、多くの
平均値予測モデルは、まばらな需要をうまく把握できるようにデザインされてきました。ただ、クォンタイルの観点からは、より基本的な問題ながら、平均値予測であれば、まばらな需要の場合、正確にクォンタイルを外挿することはできないと言えます。対照的に、本来のクォンタイルは需要の
機能指数的パターンに完全にフィットすることができます。
変動激しい需要(一括発注)
一括発注がなされると、過去の需要カーブは比較的変動激しい線を描きます。この形はわずかな注文が総需要の顕著な割合を占めていることを示しています。しかしながら、断続的な需要の場合とは対照的に、常に需要がゼロの状態が存在します。ここで基本的な問題は、需要が
整数値を通過することではなく、平均値予測が将来的な変動激しい需要を正確に見通すことができていないことを示しています。
端的に言って、変動激しい需要に対応できる手法は二つ。
- もしも企業が資源を事前に配置するまでもないと判断したのであれば、存在を無視。
- 取り扱うあるいは少なくとも変動のある程度の部分に対応すべく、事前配置資源を修正する。
どちらにしても、平均値予測は見劣るものです。外挿法によるクォンタイルは依然として変動を取り入れるには低過ぎ、同時に、変動していない需要に対応する資源を過大評価しています。本来のクォンタイル予測がより直接的に、より精緻な方法で変動激しい需要に対応します。
Lokadの本来のクォンタイル予測
Lokadはインプットとして時系列をとる
完全なる自動化されたオンラインサービスを提供しており、本来のクォンタイル予測を出します。それぞれのクォンタイルは期間および目標率(在庫最適化の場合は、それぞれリードタイムおよびサービスレベル)と合致したものです。外挿の必要はありません。
クォンタイル予測の過程で求められる
統計的専門性はゼロです。実際、多くの企業が
再発注点を最適化すべく、Lokadが提供するウェブアプリケーション
Salescastを利用しています。なお、再発注点は在庫固有のクォンタイル予測となります。
それぞれの時系列で、クォンタイル予測は一つのデータ点となります。平均値予測とは異なり、
クォンタイル予測は一般に過去の曲線から将来にまでわたってつながる
曲線で示されません。
統計学上でいえば、クォンタイル予測は異なった動きをします。しかし、根本的な実質
需要パターンは、トレンド、季節性、商品ライフサイクル、プロモーションといったもので、同じです。弊社の
従来型予測技術でサポートされる全てのパターンは、一方で、弊社の
クォンタイル予測技術からもサポートされています。
従来型(平均値)予測 vs クォンタイル予測
数学的見地からは、
クォンタイル予測は従来の予測といったものを
一般化したものです。実用性の見地からは、クォンタイル予測は通常、需要予測を上回るか、下回るかのリスクが非対称である多くの事業状況にて優れています(より正確)。
しかしながら、クォンタイル予測は
読みにくく、直感的さに劣ります。従い、従来型予測は事業の展開を直感的に得たいマネージャーにとり、基礎的なツールであり続けます。
従来型の予測を廃止しようなどとは夢にも思っていません。実際のところ、予測技術向けの研究開発費は、二種類の予測が恩恵を受けるべく取り計らっています。クォンタイル予測は需要の統計的な動作に関する理解を洗練する機会ともいえます。私どもの最重要課題は、引き続き
より正確な予測を出すことにあります。