精度の向上(低回転型向け)および財務影響


著者Joannes Vermorel、2012年3月推敲

在庫に関してみれば、需要予測の精度を高めることで節約がもたらされます。ここでは、回転率が15以下の在庫に対する節約を定量化しています。なお、在庫切れ率を変えずに、在庫の水準を低減させることに余分の精度が全て投じられるとの見方をとっています。

回転率の高い在庫に関しては、別の節約式をお使いになることをお勧めします。ここでは在庫水準を変えることなく、余分の精度を在庫切れ率を下げることに投じています。

証明の詳細は後述の通りですが、先ずは最終結果について見てみましょう。以下の通り変数を導入します。
  • $V$は棚卸価額。
  • $H$は年間保有コスト(パーセント)。在庫に関連する摩擦の総計。
  • $\sigma$はシステムの予測エラー。MAEユニット(平均絶対誤差)によって表される。この測定の定義は後述。
  • $\sigma_n$はベンチマークされた新しいシステムの予測エラー($\sigma$よりも低いことが望ましい)。

予測見直しによる年間の利益$B$は以下の通りに表されます。 $$B=V H \left(\sigma - \sigma_n \right)$$

平均絶対誤差ユニット

ここで紹介した式はエラーがリードタイムを通し測定され、リードタイムの間の総売上と均質な割合とされた場合に成り立ちます。

なお、リードタイムの間に測定されたMAPE(平均絶対誤差百分率)は、この定義に当て嵌まりますが、ここでは、MAPEを使わないように強くお勧めします。確かに、滞留在庫がある時にMAPEは不規則な測定ができます。ここでは低い回転率の在庫に注目しているのであって、滞留在庫の存在自体はほぼ確かなこととしか言えません。

平均絶対誤差MAEユニットの算出法(百分率と同質)。
  • リードタイムの期間において、$y_i$はアイテム$i$に対する実際の需要。
  • リードタイムの期間において、$\hat{y}_i$はアイテム$i$に対する需要予測。

測定の一貫性のために、全てのアイテムに対して同じ開始日$t$が使われるとします。その場合、MAEユニットは以下のように表せます。 $$\sigma = \frac{\sum_i |y_i - \hat{y}_i|}{\sum_i y_i}$$ この値は百分率と同質であり、MAEと同じような動きをします。MAPEと違うところは、滞留在庫、つまり$y_i = 0$のアイテムによってマイナス影響を受けないことです。

実用的な例

大規模なB2Bの専門家用機器の小売ネットワークが、新たな予測システムを介して相対的予測エラーを20%削減することができたと想定してみましょう。

  • $V = 100,000,000$ € (1億ユーロ)
  • $H = 0.2$ (年間の在庫の摩擦コスト20%)
  • $\sigma=0.2$ (従来のシステムによるエラーは20%)
  • $\sigma_n=0.16$ (新システムによるエラーは16%)

上述の式にあてはめると、年間の節約額として$B=800,000$€が算出されます。

式の証明

この結果を証明するために、新システムで作成された全ての予測に体系的低下バイアス$\sigma - \sigma_n$ パーセントを施してみましょう。このバイアスを導入することで、
  • 全ての予測を下回るエラーは$\sigma - \sigma_n$ パーセント高まり、
  • 予測を上回るエラーの平均を引き下げます(定量化は不明)。

予測を上回るエラーにもたらされたバイアスの改善を却下すると、最悪の場合、新しい、今やバイアスが施された予測システムは$\sigma - \sigma_n$ パーセント効果が低下し、それにより全体の精度は$\sigma$と同等あるいはそれ以下になります。

ここで、在庫全ての価額$V$は、需要リードと比例していることに注目します。この動きは安全在庫モデルを在庫水準の決定に利用する時には、明示的となりますが、基本的にはどの別の方法においても同様にあてはまります。

従って、予測を$\sigma - \sigma_n$パーセント下げることで、在庫総額$V$にも同様の引き下げとなります。よって、バイアスされたシステムの精度は$\sigma$の低さであることから、在庫切れの頻度は従来型システムの時と比べて同様に低くなるはずと言えます。

最後に、より精度の高い予測をベースに、$\sigma - \sigma_n$ パーセントの低い在庫水準を築くことが可能であることが分かりました。この時、予測は従来型システムに比べより良い、或いは同様(精度の点で)となることから、これにより在庫切れは増えることになります。

従って、在庫の削減幅は$V \left(\sigma - \sigma_n \right)$となります。年間の摩擦コストの総計が$H$であることから、この在庫の削減が節約としてもたらす規模は$B=V H \left(\sigma - \sigma_n \right)$です。

在庫維持費に関する誤解

変数$H$は在庫を保有することでの全ての摩擦コストが含まれます。特に、頻繁に目にする誤解として、$H$の値が4%から6%の間と思う方が多いと言えます。それは運転資本を調達する上で銀行に借り入れをした際のコストしか含まれていないのです。

現金を在庫に変えることは簡単です。難しいことは、在庫を現金に戻すことです。
厳密な意味での財務コストのみを考慮することは、実際の在庫コストを大幅に過小評価することになります。
  • 保管することは、一般的に年間で一般経費の2%から5%に値します。
  • 陳腐化コストはほぼ全ての製造品において、年間ベースで10%から20%。

従って、大部分の完成品の在庫に関して、一般経費が対売上比20%ということは、比較的妥当な摩擦率を評価できます。

Lokadのアプローチ

低回転率の在庫には、本来のクォンタイル予測が精度の観点からは一般的に優れた結果を出します。従来型の平均値予測は、断続的な需要となると、結果が劣ります。現行の在庫管理状況を弊社のウェブアプリSalescastによる予測とどうぞ比較なさってみてください。